アカハライモリを用いた脊索形成および脊柱形成のしくみ

動物のからだを考えるとき、「繰返し構造」は重要な視点である。脊椎動物に見られる典型的な繰返し構造は「椎骨」を主として構成される脊柱である。 脊柱は胚に形成される「脊索」をひな形として形成され、脊索は胚の頭尾方向への伸長に重要な役割を果たしている。脊索は脊索細胞とこれを取り巻く脊索鞘(コラーゲン線維と弾性線維からなる)で構成されるが、骨とは全く異なる構造である。この脊索という構造をもとに、どのようにして椎骨という硬い骨が作られるのか、椎骨という繰り返し構造が作られるのかを明らかにしようと取り組んでいる。

アカハライモリを用いた四肢および尾の再生のしくみ

多くの脊椎動物は胚の頃には再生能力を持つが、成体になるとほとんどの再生能力を失う。ところが、アカハライモリは成体になっても盛んな再生能力を持ち続け、手・肢・尾・あご・網膜・心臓(の一部)などを完全に再生することができる。例えば、上腕を切断すると、関節も含めて失われた部分が「丸ごと」再生される。尾も内部に存在する脊柱を含んで、やはり丸ごと再生される。人間では、尾は痕跡的にしか存在しないため注目されないが、尾はその内部に脊柱を持つので、尾の再生は脊柱の再生につながる大事な現象である。脊柱の形成(発生過程)と作り直し(再生過程)を同一種の動物で追求できる数少ない脊椎動物であるアカハライモリを用いて、これらのしくみの共通点と相違点を明らかにしようと取り組んでいる。